第 43 号

議会と住民のミゾ

 現在、行政の効率化とコストの削減を目指して「平成の大合併」が全国で推進されている。
 四国中央市は川之江市・伊予三島市・土居町・新宮村の2市1町1村が合併して今年の4月に産声をあげた。しかし、誕生当初から市民には行政に対する不満の声があちこちから聞こえていた。そのひとつが議員の任期延長に関する問題である。
 通常の合併の場合、合併した時点で議会は解散されて新しく選挙がおこなわれ、新しい町は新しい議員によって運営されていく。しかし、この度の合併は通常とはことなり、合併後も最長2年間は引き続き議員の在籍が特別に認められている。いわゆる在任特例である。これが、現在全国で大問題になっている。合併の趣旨から明らかに逸脱しているからだ。
 四国中央市の場合、合併後の議員の数が68人に膨れ上がり、1年11ヶ月もその状態で議会を運営する。行政の効率化とコストの削減が合併の趣旨であるが、これではなんのための合併なのか疑問に思うのが普通だ。議員への報酬を考えても4億以上の支出を迫られ、財政にも大きな負担となる。
 このような状況の中で、今年の8月8日から在任特例適用に反対する住民グループ、「明るい四国中央市を創る会」が議会の早期解散を掲げて1ヶ月間の署名運動を開始した。これには四国政経塾の塾生も運動に加わった。
 私は西条市に籍を置いているので署名を集めることはできなかったが、少しでも参加して署名運動というものを肌で感じて学びたかったため、裏方として参加させていただいた。というのも、実は私の住む西条市も同じような問題を抱えているからである。今の西条市は今年の11月に2市2町と合併し、新しい西条市として誕生するが、在任特例法を適用して1年7ヵ月にわたる議員の在籍を認めている。しかも議員の数は県下で最大級の78人にのぼる。私をはじめ、市民も明らかにおかしいと感じており、もし、同じように西条市でも議会解散を求める署名運動が起こった時に、四国中央市の署名運動で得た体験を役立てることができるという考えがあったからである。
 私は、この署名運動に参加してひとつ感じたことがあった。それは私のような若い世代がなかなか署名してくれなかったこと。というよりも、むしろ署名運動そのものに関心がないようだった。最近若者の政治離れが深刻になっているが、その片鱗を思わぬところで見せられたのである。もちろん積極的に署名してくれた方もいたが、署名簿には昭和10年〜30年代生まれの方が大半を占めていた。私はふと、この世代がこのまま30年、40年たって国や企業を動かす世代になった時、果たしてこの日本はどうなってしまうのだろうかと少し暗い気持ちになった。考えてみれば今回の問題もふさわしい議員を住民が選んでいれば起こらなかったと思う。そういう事を思うと、住民側にも考えるところはあった。議員の質もそうだが、住民自らの質も向上させる努力が必要ではないか。議員を選ぶのは他ならぬ住民なのだから。
 今回の運動で集まった署名は4万3271人分で、有権者の過半数をこえた。この結果は住民にとって大きな自信につながるだろうし、これから合併を控えている市町村議会にも大きな影響を与えたと思う。そして私自身もいろいろ考えさせられ、非常に有意義であった。
 最後になりましたが、署名を集めて下さった受任者の方々、そして、署名して下さった市民の皆さまご協力ありがとうございました。
平成16年11月1日
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