第 61 号
高松研修
 5月21日(土)に、四国政経塾生は香川県高松市へ研修に出かけた。今回の研修は幕末に活躍した通常の偉人館巡りとは違い、高松にある神社や屋島での源平合戦など、四国の文化や歴史を確認することが目的であった。考えてみれば、入塾して今日までの偉人館巡りは幕末の志士達が対象であり、それ以外の時代の人物などに触れるのは初めてであった。
 高松市は、西条市から高速道路で約30分の距離にあり、国や県の出先機関が集中する香川県の県都である。現在、周辺各地域との合併を進めている。

 まず、我々が最初に向かったのは四国の先人の知恵が息づいている「四国村」というところだ。ここは、昔の住居や生活で使っていた道具などを四国各地から運び、当時のままの姿で再現されていて、それが村全体に点在している。国・県・市から指定を受けた文化財も多数あり、過去における四国の文化の集大成といえるだろう。
 中でも目を引いたのは、砂糖しめ小屋だ。当時は現在のような機械類は一切なく、すべて手作業で行われていた。砂糖しめには大きな力をかけ加えなければならないが、人間の力ではそう長い間持続しないだろう。そこで、当時の人々は建物を円形状に作り、腕気を牛に引かせ、建物の中をグルグル廻らせて臼を回転させ、砂糖きびをしぼったのだ。建物内部には、当時の牛がつけたと思われる傷跡が残っていた。作業をおこなうために身に付けた「知識」を、より正確且つ効率よくおこなうための「知恵」に変えたのである。知識を知恵に変えるのは本当に難しいことだ。工夫を凝らし、無駄を省くというのは経験や閃きによってあらわれる知恵の一つと考える。
 現代人の知識は豊富だ。だが、何人の人間がその知識を知恵に変えることができるのか。国が、地域が、家庭が、そして個人が今抱えている問題も知恵を絞ることで随分と解決できるのではないか。豊かな時代になり、知恵を絞ることを現代人は忘れてしまったのではないか。私には、この砂糖小屋の先人達がそう訴えているような気がした。
 この四国村には西洋風のモダンな洋館もある。明治期の建築で、英国のワサ・ダウン氏の住宅である。昔の住宅と洋館が一緒にあるのもユニークだなと思った。

 次に向かったのは平家物語歴史館。平家の栄枯盛衰の様子がろう人形で第1景から第17景まで順をおって描かれている。私は平家の時代については少々疎く、今の大河ドラマで流れを把握している程度であり、この歴史館はよい勉強になった。
 栄華を極めた平家が清盛亡き後、源氏によって滅ぼされていく様は、まるで消えていく現代の企業を写しているように感じた。清盛(社長)は頼朝(ライバル会社社長)や義経(その子会社社長)に匹敵する人材を育てることができなかった。清盛自身の悪政(事業失敗)の部分もあろうが、後を継ぐ後継者(次期社長)を育てるのはいつの時代も難しいものだと感じた。

 最後に市内にある「元気の種」を訪れた。ここは、地球環境を守るため様々な活動に取り組んでいるてんつくマンという一風変わった男が設立したリサイクルショップだ。店内は明らかにまだまだ使えそうなものがところ狭しと並んでいる。大量生産・大量消費の陰では、地球の限りある資源や環境が破棄され続けてきたのだと感じた。しかし、人類が生きる上で、そして人類が発展することで環境破壊は必ず起こる。しかし、それをゼロに近づけていくことはできる。地球上の人類一人一人が自然環境について考えて学び、行動(アクション)を起こすことによってすべてが変わってくるはずだ。日本は自然に恵まれているため、私を含めて自然の有難味に欠けるところがある。もう一度、自分たちの子孫のために地球環境について真剣に考え、対応策をたてなければならない。

 この度の研修は、今までとは違った面もあり、楽しくいろいろなことを考えるきっかけができた。四国の文化や自然を学び、それを守っていきながら日々、成長していきたいと思う。
平成17年5月21日
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