松下幸之助氏の教えから=原点に返って志を堅持する


 経営において原点を忘れずとは、昨今のような厳しい時期にこそ大変重要となります。
 松下幸之助氏は、その返るべき原点について「刻々に変化する社会情勢の中で、次々と起こってくるいろいろな問題に誤りなく適正に対処していく上での拠りどころとなるのは、その社会の基本理念です」と述べています。
 基本理念には、会社が何のために存在し、どのような目的を持ち、どのようなやり方で進んでいくかという基本的な考え方が示されています。 いかなる時にも守り通すべきものが貫かれているからこそ、基本理念を再認識すれば、見失いがちな進むべき道を見定める事が出来ると話しています。 逆風が吹き荒れるなかも進まなければならないからです。 松下幸之助氏は、自らの体験からも非常に厳しい事ではあるが、次のように乗り越えてきたと話しています。
 「ともすればくじけそうになり、また時には煩悶することもあったのです。 その度に心をとりなおし、あるいは気を引き締めて勇気を振り絞って、志とするところを口にし、話し続けました。 それは、相手に伝えられると同時に、自分自身を鞭撻するためでもありました。 そうすることによって、私自身の志をより強固にし、堅持する事ができたのです」

 さて、昨今は日本の財政危機も一段と深刻な状況となり、国・会社・地域・家庭においても、痛ましい事件が後を絶ちません。 経済発展を成した後、本当に大きな代償を払ったような気がしてまりません。 その代償とは、友であり仲間であり、家族であり、人間自身の人格ではないかと思います。 会社における基本理念と同じく、私たち個人にも生きるための基本理念があるはずです。 その基本理念とは競争に勝ち抜くという精神と同時に、痛みを分かち合い、共に生きるという共生の精神ではないでしょうか? 現在は大企業と言えども生き残るために沢山のリストラが実施されています。 短期的対策としては非常に有効なのかも解りませんが、果たしてそれ自体がその企業の基本理念に沿う事なのか? 引いては人の道に沿う事なのか? 今一度考えなければなりません。
 自分だけがよければという考え方が、本当に蔓延してきた社会になりました。 昨今のような不況の厳しい時期には一段と社会秩序が乱れてきています。 しかし、今こそ原点に立ち返り、人はなぜ生まれ、何の目的をもって、どのように生きて行くのか、人としての基本理念を思い返さなければならない時期ではないでしょうか。

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